※Facebookの友人たちの交信のなかで、さだまさしの曲「償い」「親父の一番長い日」が話題に出ていた。私も聞いてみて、そこからいろいろなことを考えた。
その作詞作曲の経過は『ウィキペディア(Wikipedia)』に詳しく紹介されていて、YouTubeで検索すると、聞くことができる。
〇『償い』作詩・作曲:さだまさし
月末になると ゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに
必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
仲間はそんな彼をみてみんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり
僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
ブレーキが間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた
人殺し あんたを許さないと 彼をののしった
被害者の奥さんの涙の足元で
彼はひたすら大声で泣き乍ら
ただ頭を床にこすりつけるだけだった
それから彼は人が変わった 何もかも
忘れて 働いて 働いて
償いきれるはずもないが せめてもと
毎月あの人に仕送りをしている
今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣き乍ら走り込んで来た
しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目に初めて
あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り
「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよくわかりました
だから どうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に
主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
それよりどうかもう あなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
手紙の中身はどうでもよかった それよりも
償いきれるはずもない あの人から
返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて
神様って 思わず僕は叫んでいた
彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの
やさしい人を許してくれて ありがとう
人間って哀しいね だってみんなやさしい
それが傷つけあって かばいあって
何だかもらい泣きの涙が とまらなくて
とまらなくて とまらなくて とまらなくて
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〇『親父の一番長い日』さだまさし作詞・作曲
おばあちゃんは夕餉の片付けを終えた時
弟は2階のゆりかごの中で
僕と親父は街頭テレビのカラテ・チョップが
白熱した頃に 妹の誕生を知った
それから親父は 占いの本と辞書と
首っぴきで
実に一週間もかけて
娘のために つまりはきわめて何事もない
ありふれた名前を見つけ出した
お七夜 宮参り 夫婦は自画自賛
可愛いい娘だと はしゃぎ廻るけれど
僕にはひいき目に見ても しわくちゃの失敗作品
やがて彼女を訪れる 不幸に胸を痛めた mm…
兄貴として mm…
妹の生まれた頃の我が家は
お世辞にも 豊かな状態でなかったが
暗闇の中で 何かをきっかけに
灯りが見えることがある
そんな出来事だったろう
親思う心に勝る 親心とやら
そんな訳で妹は ほんのかけらも
みじめな思いをせずに育てられた
ただ顔が親父に似たことを除けば
七五三 新入学 夫婦は狂喜乱舞
赤いランドセル 背負ってか 背負われてか
学校への坂道を 足元ふらふら下りてゆく
一枚のスナップが 今も胸に残ってる mm…
兄貴として mm…
我が家の血筋か 妹も足だけは速くて
学級対抗のリレーの花形で
もっとも親父の応援のすごさに
相手が気おくれをして
随分助けられてはいたが
これも我が家の血筋か かなりの演技派で
学芸会でもちゃんと 役をもらった
親父の喜びは 言うまでもない
たとえその役が 一寸法師の 赤鬼の役であったにしても
妹 才気煥発 夫婦は無我夢中
反抗期を過ぎて お赤飯を炊いて
中学に入れば 多少 女らしくなるかも知れぬと
家族の淡い期待 あっさり裏切られてがっかり mm…
兄貴として mm…
妹の初恋は高校二年の秋
相手のバレー部のキャプテンは よくあるケース
結局言い出せる 筈もなく
枯葉の如く散った これもまたよくあるパターン
彼氏のひとりも いないとは情けないと
親父はいつも 笑い飛ばしては いたが
時折かかる電話を 一番気にしていたのは
当の親父自身だったろう
危険な年頃と 夫婦は疑心暗鬼
些細な妹の言葉に揺れていた
今は我が家の 一番幸せなひととき も少し
このままいさせてと 祈っていたのでしょう mm…
親子として mm…
或る日ひとりの若者が 我が家に来て
“お嬢さんを僕に下さい”と言った
親父は言葉を失い 頬染めうつむいた
いつの間にきれいになった娘を見つめた
いくつもの思い出が 親父の中をよぎり
だからついあんな大声を出させた
初めて見る親父の狼狽 妹の大粒の涙
家中の時が止まった
とりなすお袋に とりつく島も与えず
声を震わせて 親父はかぶりを振った
けれど妹の真実を見た時
目を閉じ深く息をして
小さな声で…
“わかった娘は くれてやる
その変わり一度でいい
うばって行く君を君を殴らせろ”と
言った mm…
親父として mm…
妹の選んだ男に間違いはないと
信じていたのも やはり親父だった
花嫁の父は静かに 娘の手をとり
祭壇の前にゆるやかに立った
ウェディング・ベルが 避暑地の教会に
鳴り渡る時 僕は親父を見ていた
まぎれもない 父親の涙の行方を
僕は一生忘れないだろう
思い出かかえて お袋が続く
涙でかすんだ 目の中に僕は
今までで 一番きれいな妹と
一番立派な 親父の姿を 刻み込もうとしていた mm…
兄貴として mm…
息子として