2022-01-01から1年間の記事一覧
〇「父の遺品――『沈黙のひと』が生まれるまで」 文:小池真理子、(文藝春秋BOOKSより) ・最後まで生きようとした男 ある日、酒の席で、長く親しくしてきた文藝春秋『オール讀物』の編集者にそんな話を打ち明けた。父の死後、半年ほどたっていたと思う。 遺…
〇宮尾節子・詩「きれいに食べている」 ・宝石をひろうように、きれいな言葉をひとつ見つけました。 『毎日新聞のニュースサイト「毎日jp」に4月、東日本大震災で亡くなった息子の弁当を、がれきの中から発見した両親の記事が掲載された。母親は弁当箱が空…
〇柳澤桂子 『いのちのことば 』から・次第に動けなくなっていく身体。すべての望みは絶たれ、私は暗闇の中に放り出された。医学からも見放され、孤独と絶望の中から生を見つめると、それは赤々と炎のように輝いているではないか。そのとき、私は科学を突き…
〇大岡信の詩から・「虫の夢」「ころんで つちを なめたときはまづかつたけど つちから うまれるやさいや はなにはあまい つゆの すいだうかんがたくさん はしつて ゐるんだね」 こどもよきみのいふとほりだ武蔵野のはてに みろよ空気はハンケチのやうに揺れ…
〇『生きる―わたしたちの思い』谷川俊太郎with friends について 「谷川俊太郎さんの傑作『生きる』をお手本に、みなさんの『生きる』をつなげてひとつの詩みたいなものを作りませんか?」 07年秋、mixiに書き込まれた呼びかけに、半年で2000件を超える投稿…
〇良寛の俳句と和歌から 良寛(1758~1831)は江戸時代後期の曹洞宗の僧侶、歌人、漢詩人、書家。本名山本栄蔵。号は大愚.越後出雲崎の名主の家に生まれ,18歳で出家し、34歳で諸国行脚の旅に出たのち、郷里に住み五号庵をいとなみ、托鉢生活を続けた。69…
〇山尾 三省 (著), 山下 大明 (写真)『水が流れている―屋久島のいのちの森から』から ・山尾三省・詩「水が流れている」 水は どこにでも流れているが その水が ほんとうに 真実に流れることは あまりない 多くの時には 水はただ流れているだけで 真実に流れ…
〇吉本隆明の詩『日時計篇』『転位のための十篇』から 吉本隆明に関心があり詩もいくつか読んでみた。読み慣れていないことや表現が難しくよくわからないのが多く、実際あまり読みこんでいないのだが、その中で印象に残る二つの詩を記録しておく。また、吉本…
〇妻を詠んだ俳句 妻の誕生日を機に妻を詠んだ俳句を探してみた。母、父、子どもなどに比べて少ないと思った。200項目近くある瀬戸内寂聴・斎藤慎爾『生と死の歳時記』(法研)でも人妻の項目はあるが妻の項目はない。 しかし、俳人のなかにはよく詠む人もい…
※Facebookの友人たちの交信のなかで、さだまさしの曲「償い」「親父の一番長い日」が話題に出ていた。私も聞いてみて、そこからいろいろなことを考えた。 その作詞作曲の経過は『ウィキペディア(Wikipedia)』に詳しく紹介されていて、YouTubeで検索すると…
〇さだまさし作詞・作曲『風に立つライオン』 突然の手紙には驚いたけど嬉しかった 何より君が僕を怨んでいなかったということが これから此処で過ごす僕の毎日の大切な よりどころになります ありがとう ありがとう ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更…
〇過去に起こったことを現在に活かすことについて。 知人のブログに、まど・みちおの戦争協力詩に触れていて、思うことがあり調べてみた。 2015年11月戦争協力詩を含む「続 まど・みちお全詩集」(理論社、2015・9月)の刊行を期して、報道各社、関係者など…
〇複眼的戦争論 古山高麗雄『日本好戦詩集』(『季刊藝術』1979年冬号)は、『季刊藝術』の編集長として、また作家として活動していた58歳のときの自伝的短編小説である。 自分で自分が腐ってしまうような日常をつくっている主人公が、自炊をはじめて、と…
〇原爆忌俳句大会のこと 俳句を通して非核・平和を訴える「原爆忌全国俳句大会」(実行委員会主催、毎日新聞京都支局など後援)が2021年9月の第55回大会を最後に、幕を下ろすことになった。 半世紀以上にわたり、17文字に平和への思いを刻んできたが、投…
〇浅井慎平句集から ・『ノスタルジア』(浅井愼平句集 2008) 「ノスタルジアは人生そのものである。人はなにかを見ればなにかを思い出す。五感すべてがノスタルジアの装置というわけだ。ぼくの場合俳句という表現にノスタルジアが、いつも忍び寄ってくる。…
〇正木ゆう子句集『羽羽(はは)』(春秋社、2016)から(能村登四郎に「老残のこと伝はらず業平忌」あれば)・絶滅のこと伝はらず人類忌 これは、東日本大震災と母の死が強く反映されている。正木ゆう子句集『羽羽』のなかの一句。「あとがき」に〈東日本大…
〇本書は、岸本氏がこれまで俳句関連の雑誌に寄稿してきた虚子に関する文章をもとに構成したもの。 虚子の俳句の魅力を多角的に分析して、俳句という文学の特性を明らかにする。 軽々と詠まれているように見える虚子の句が、いかに俳句という器を生かしたも…
〇池田澄子が金子兜太100句を選び、一句ずつについて作者と選者・評者のふたりで語り合うという趣向の『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む』を、面白く読む。 ほぼ時間軸に沿って句が並んでいるので、伝記的な意味での兜太の生き方、来し方にふれる。 池田の…
〇池田澄子 『シリーズ自句自解Ⅰベスト100池田澄子』(ふらんす堂 、2010) 本書は自句自解も解説というよりは句にまつわるエッセイの趣があり、その句にまつわる背景や作句つくりの様子が明かされている。 ★恋文の起承転転さくらんぼ 《十歳代後半からどっ…
〇『『池田澄子百句』 坪内 稔典+中之島5編集 (創風社出版、2014) 『池田澄子百句』は坪内稔典と船団メンバーと関係者5人の編集。 発表の句集5冊、空の庭(1988年)、いつしか人に生まれて(1993年)、ゆく舟(2000年)、たましいの話(2005年)、拝復(2…
〇『石原吉郎句集』と短歌集『北鎌倉』 石原吉郎(1915-1977)は、1945年ソビエト軍に抑留、25年の「重労働刑」を宣告されシベリアの強制収容所で服役。1953年スターリン死去に伴う「特赦」により帰還、その後、本格的に詩を書き始め、その分野で注目されるよ…
〇内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』のなかの小編「あなたなしでは生きてゆけない」から、自分にとって「かけがいのない人」について考えてみた。まず浮かぶのは妻である。面と向かってはいわないが、心の底にはあるだろう。 70歳を過ぎた私たち…
〇わたしの現状 一昨年診断された脊髄小脳変性症の進行は、ますますひどくなりギクシャク度は増していて、ふらつきも頻度を増している。 居宅では何とか一人で動いているが、妻の支えなしには外出もままならない状態だ。 肺機能が悪いのでコロナウイルスの感…
〇2017年句日記(4月9日~15日)4月9日~10日に旅行する。 親しくしている福島の友人夫妻と随時観光も兼ねて会いたいねと、今回は富弘美術館と日光東照宮などに行く。 ・花の詩画微笑みかけて春うらら 富弘美術館は星野富弘の故郷、群馬県みどり市東町にあり…
※3年前に富弘美術館に行く。富弘美術館は星野富弘の故郷、群馬県みどり市東町にあり、美しい山々と湖、豊かな緑につつまれ道の駅にもなっていて、地方の静かな里のオアシスになっている。館内および周りの風景そのものが、優しく香り立つような「花の詩画」…
〇折笠美秋についての覚書・ 微笑が妻の慟哭 雪しんしん 『君なら蝶に』(昭61)所収。作者は新聞記者だった時に筋萎縮性側索硬化症にかかり、全身の筋肉が不随になり、人工呼吸器で命を保つようになる。目と口は動かせるが声は出せない状態で病院生活を送り…
〇先日,神戸市に移住後、地元の句会に参加したいとインターネットで調べて、自由な楽しい雰囲気を感じ、坪内稔典代表の「船団の会」の句会に、はじめて参加した。 出句は、当日参加する前に、兼題(1)「選」の字を使って1句、兼題(2)「蚕(季語)」で…
〇それぞれの意味の世界へ 岩崎航の詩「貧しい発想」の中の「貧しい発想を押しつけるのは やめてくれないか」という表現に出てくる「押しつける」という言葉に着目し、ブログなどに「貧しい発想法は、結局のところ、自分自身を縛ることになり、押しつけるこ…
〇正岡子規の俳句、短歌、随筆『病牀六尺』 正岡子規(1867年―1902年)。1897年(明治30年)に俳句雑誌『ホトトギス』を創刊。子規31歳の1899年夏頃以後は脊椎カリエスからほとんど病床を離れえぬほどの重症となり、数度の手術も受けたが病状は好転せず、や…
※同日の【貧しい発想(岩崎航詩集『点滴ポール ~生き抜くという旗印』を読んで。①)】に続いての投稿記事。 〇2015年5月、6月と読売新聞のヨミドクターの岩永直子さんから5回に亘って編集長インタビューを受けて、その記録が、読売新聞・「yomiDr」に掲載…