日々彦・詩歌句とともに

主に俳句、付随して詩歌などの記録

2023-01-01から1年間の記事一覧

◎『石牟礼道子全句集 泣きなが原』から

◎『石牟礼道子全句集 泣きなが原』から(藤原書店、2015)・日々彦選句 さくらさくらわが不知火はひかり凪 花ふぶき生死のはては知らざりき いかならむ命の色や花狂い 女童や花恋う声が今際にて 花びらも蝶も猫の相手して 毒死列島身悶えしつつ野辺の花 わが…

石牟礼道子「花を奉る」など

〇石牟礼道子「花を奉る」 春風萌(きざ)すといえども われら人類の劫(こう)塵(じん)いまや累(かさ)なりて 三界いわん方なく昏(くら)しまなこを沈めてわずかに日々を忍ぶに なにに誘(いざな)わるるにや 虚空はるかに 一連の花 まさに咲(ひら)かんとするを聴く…

多田富雄の最終詩集『寛容』(石牟礼道子)など

〇免疫学者、多田富雄の最終詩集『寛容』石牟礼道子から抜粋 今はこんな状態でとっさに答えができません。しかし僕は、絶望はしておりません。長い闇の向こうに、何か希望が見えます。そこに寛容の世界が広がっている。予言です。 ・多田富雄(NHK「100年…

「生きる」について(多田富雄、池田晶子)

〇小松成美『虹色のチョーク----』などから、よりよく生きることが働くにつながるのであり、働くために生きているのではない。 現社会で働くことは、その成果として収穫する、換金して稼ぐあるいは給料をもらい自らの生活を成り立たせていく。その結果として…

ワーズワース「虹」、鶴見俊輔の言葉など

〇ワーズワースの詩「虹」(平井正穂 訳) 私の心は躍る、大空に、 虹がかかるのを見たときに。 幼い頃もそうだった、 大人になった今もそうなのだ、 年老いた時でもそうありたい、 でなければ、 生きている意味はない! 子供は大人の父なのだ。 願わくば、 …

サルトル『嘔吐』、瀬戸内寂聴・齋藤慎爾『生と死の歳時記』日記

〇瀬戸内寂聴・齋藤慎爾『生と死の歳時記』の「日記」の項で、齋藤がサルトル『嘔吐』から引用している。 〈・「日記をつけるときは、つぎのことが危険だと思う。すなわち、万事誇張して考えること、待ち伏せをする気持ちでいること、たえず真実をでっちあげ…

塩見恵介『お手本は奥の細道 はじめて作る 俳句教室』

塩見恵介(著)『お手本は奥の細道 はじめて作る 俳句教室』(すばる舎、2013)を読む。 見開きページで、俳句、写真、芭蕉の紀行文や書簡(現代語訳)、俳句のポイント、俳句に関する豆知識などが見やすい配置で掲載されている。 作句のヒント①形容詞をいれな…

◎書評:坪内 稔典『季語集』『正岡子規 言葉と生きる 』

○ 俳句・短歌の実作者であり研究者である坪内氏が、独自に選んだ300の季語についてのミニエッセイ。。 代表的な季語でも載っていないものがたくさんある一方、「ブルーヘイズ」「鯨来る」「デッキチェア」「サーフボード」「クサギの虫」「赤い河馬」「くす…

プロフェッショナル「17音、言葉の力を信じて~俳人・夏井いつき~」

プロフェッショナル 仕事の流儀 「17音、言葉の力を信じて~俳人・夏井いつき~」21/12/7「一句一遊」20年 https://note.com/yequalrx/n/n22fc87d0226a俳号:Rx (中学教師だった20代の頃、問題児を受け持った時に)「自分が考えたことを、ちゃんと自分の…

夏井いつきの『俳句の授業』『575でカガク』など

〇夏井いつきの『世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所、2018) 目次より:1)自分の配合を考えよう2)俳句にはふたつの技がある3)「尻から俳句」で俳句デビュー4)「十二音日記」を書いてみよう5)完成した句をチェックしよう6)「切れ字」を使って…

俳句入門。藤田湘子『新版 実作俳句入門』

◎俳句入門。藤田湘子『新版 実作俳句入門』 〇藤田湘子『新版 実作俳句入門』(角川俳句ライブラリー、2013) 〈内容:文体はわかりやすく、内容は高度なところを目指した実践的俳句入門書。長年の実作体験と俳句指導を背景に、作句のテクニックを適切な例句…

◎書評:『モーロク俳句ますます盛ん 俳句百年の遊び』

〇本書の目次は次のようになっている。 ・ところで俳句そもそも (俳諧から俳句へ、俳句から俳諧へ/連衆いろいろ/俳句レッスン1から10) ・俳句百年、モーレツからモーロクまで (近代俳句小史/俳句・短歌の戦前まで/戦後俳句のゆくえ) ・ますます俳…

ラッセル=アインシュタイン宣言

※重要なことが書かれていて宣言内容の全文あげる。宣言署名者など「ウィキペディア」参照 ラッセル=アインシュタイン宣言 - Wikipedia ラッセル・アインシュタイン宣言(1955) 人類が直面している悲劇的な情勢の中、科学者による会議を召集し、大量破壊兵器…

V・E・フランクル『それでも人生にイエスという』

〇V.E. フランクル『それでも人生にイエスと言う』の言葉から ・私たちが「生きる意味があるか」と問うのは、はじめから誤っているのです。つまり、私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているのです。…

アインシュタインの言葉から

〇アインシュタインの言葉から 友人からの連絡で「アインシュタインの言葉」に刺激を受けて、いろいろ調べている。 アインシュタインの言葉について、さまざまな書籍があり、インタネットで「アインシュタインの名言」と検索すると、英文の付いたものも検索…

◎「存問」としての戦火俳句(ETV特集「戦火のホトトギス」より)

〇昨年8月21日に放映されたETV特集「戦火のホトトギス」をネットで再度みる。 明治30年創刊された俳句雑誌「ホトトギス」は、今では一つの俳句雑誌だが、戦前は俳句に関心ある人のもっとも大きな月刊誌だった。 現在1500号を越えているそうだが、1945…

大道寺将司『棺一基』

「チューインガム一つ」の詩を書き写しながら思い出したのは、大道寺将司氏の句集である。句集は、4年前の2012年に『棺一基』の書名で出版された。そこにこういう句が載っていた。 先行きのあてどは読めず蜷の道 2000年問題以来、自分の先行きもヤ…

高野ムツオ『句集 萬の翅』

〇高野ムツオ『句集 萬の翅』(角川学芸出版、2013初版)が、読売文学賞を受賞し、第48回蛇笏賞も受賞した。作者は宮城県在住、東日本大震災で被災。「子熊座」主宰。 早速に読んでみた。印象に残った句を10句紹介する。 「人間に戻りてプールより上がる」 …

鶴見和子 歌集『回生』など

〇鶴見和子 歌集『回生』(藤原書店、2001 )などから ※脳出血で斃れた夜から迸り出た短歌一四五首。著者の「回生」の足跡を内面から克明に描き、リハビリテーション途上にある全ての人に力を与える短歌の数々 ・回生の花道とせむ冬枯れし田んぼにたてる小さ…

私が注目した2018年度プレバト俳句20選

〇1月初めの「プレバト(俳句)」は、名人・特待生9人による「冬麗戦」で兼題は「結露」。東国原英夫の「凍蠅や生産性の我にあるや」が優勝一位になる。 「凍蠅」は寒さで氷りついたように動かない冬の蠅を言う。結露から「凍蠅」を連想した発想と、昨年物…

冬道麻子の短歌から・握力計の知らざるちから身にありて4Bの鉛筆に文字現わるる

※10年以上前、養護学校で知り合ったKさんとの交流から。Kさんは筋ジストロフィを抱えながら病院生活を送り、そこの養護学校に生徒として在籍していた。 〇掲載句は、『森の向こう』(昭63)所収。元気で活発な少女だったが筋ジストロフィを発病、闘病生活…

柳美里著『町の形見』

〇の巻末の挨拶文から ・言葉の解放(「静物画」パンフレット挨拶文)より 〈2011年三月十一日とその後に続く避難生活の中で声を呑み、感情を巻き添えにして沈黙を通している人は多い。 言葉は、元来、声である。 沈黙の中から感情を救い出し、言葉をゆ…

緒方正人「三十八億の命の願い」

〇緒方正人「三十八億の命の願い」より抜粋 (KAWADE道の手帖『石牟礼道子 魂の言葉、いのちの海』に所収) 「私は二十歳の頃、水俣病の運動に入りました。それから実質十二年ぐらい川本輝夫さんとやっていたんですけど、一九八五年当時三十二歳の秋に、私自身…

加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書、2015)

〇加藤典洋氏による日本国憲法「九条強化案」 憲法第九条 一、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。(1項は現行通…

◎さだまさし『いのちの理由』と吉野弘の詩「生命(いのち)は」

〇二人目の孫の出産で、何人から、お祝いの言葉をいただきました。 その中に、娘と同期の親御さんがいて、丁寧なお便りがあり、《娘は、彼女らしく変わらない面と、年齢とともに成長してどんどん変わっていく面があります。誰でもそうでしょうね。それなので…

◎吉野弘と花と樹々のうた

〇これは、詩「奈々子」で読まれた久保田奈々子さんが「花と木」というテーマに沿って編んだ詩集だと述べている。 「あとがき」で次のようなことを書いている。 《父の詩は、日常の何気ない「こと」や「人」を題材にしているものの方が多いように思っていた…

◎吉野弘『二人が睦まじくいるためには』に思うこと

〇吉野弘・詩『二人が睦まじくいるためには』に思うこと。 最近、いろいろな人との出会い・交流が続いている。人は基本的に独自なものではあるが、数多の人やものなどに支えられて生きていける。 その中で、よりよく生きているうえで、とりわけ大事にしたい…

坪内稔典による金子兜太さんへの【追悼】

〇【追悼】金子兜太さん 現代俳句史でんと存在 俳人 坪内稔典 「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子」 「どれも口美し晩夏のジャズ一団」 「暗黒や関東平野に火事一つ」 これらは若い日の金子兜太さんの句だが、表現やイメージが大胆で端的、ちまちましていない。…

◎一人ひとりの心情の揺れに寄り添い続けて、高野ムツオなどから

〇先日神戸市に来てから交流している知人に阪神淡路大震災のときの話をお聞きした。今の私たちの住まいのあたりも比較的震源地に近く、甚大な被害を受けたそうだ。 そのときは、とにかく生きることに精一杯だったという。少したってから我を取り戻し、よく生…

金子兜太『いま、兜太は』

※金子兜太 著 , 青木健 編『いま、兜太は』岩波書店、2016 〇週刊『読書人ウェブ』書評(評者:青木亮人)から一部抜粋 本書は三部構成で、第一部は「自選自解百八句」、第二部にインタビュー「わが俳句の原風景」を収め、第三部は「いま、兜太は」と題して…