四季折々(日々彦・詩歌の記録)

主に俳句、付随して詩歌などの記録

◎吉野弘『二人が睦まじくいるためには』に思うこと

〇吉野弘・詩『二人が睦まじくいるためには』に思うこと。
 最近、いろいろな人との出会い・交流が続いている。人は基本的に独自なものではあるが、数多の人やものなどに支えられて生きていける。


 その中で、よりよく生きているうえで、とりわけ大事にしたいことは、異質な人との出会い・交流、忌憚なく話し合え考えていける知人・仲間、ともに楽しくメシを食べることができる家族・友人だと思っている。


 それにはまず、自分のこころの在りようが問われてくる。

 

 吉野弘の詩「祝婚歌」に次のような言葉がさりげなく並んでいる。
「二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい」


「立派すぎることは 長持ちしないことだと気付いているほうがいい」


「二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい」


「互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか あとで 疑わしくなるほうがいい」


「正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい」


「健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと 胸が熱くなる そんな日があってもいい」


「そして なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人にはわかるのであってほしい」

 

 これは表題にあるように「祝結婚」の詩であるが、人と関係をとるときの、こころに留めておきたいことでもあるように私には思えている。

 

 しばらく前に結婚した人から、「一緒に暮らすようになって、それまでそれほど意識していなかったが、一人での食事、暮らしは自由なようだが、何か寂しいものだったなと思う。煩わしいことも増えてくるのだが。」というようなことを語っていた。

 

・吉野弘・詩『祝婚歌』
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで 疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい

そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
(吉野 弘詩集『二人が睦まじくいるためには』童話屋 2003)

※初出2017-04-24